The Queen's Orchid

バーグドルフ・グッドマンという、五番街に君臨する高級老舗デパートは、ニューヨーク、いや世界の数多くある他のデパートとは「種類」が違う。

 

普通、デパートでは、商品を売っている。

 

もちろん、バーグドルフにも商品は並んでいる。

 

しかし、これは私個人の意見だが、バーグドルフ・グッドマンに売っている商品は、あくまでも、このデパートが醸し出す、「歴史と伝統」「気品」「格調高さ」という、貴族的空気のつけ合わせでしかない。メインディッシュは、まさにここの存在そのものである。

 

同じスカーフでも、他のデパートで買うのと、バーグドルフで買うのとでは、大分意味が違ってくるのではないだろうか。顧客にとっては、バーグドルフという空気の中で買った、という「体験」がとても重要なのである。

 

そして、どのような有名デパートや店舗であっても、どのような最新最強のブランディングをもってしても、手に入れることができないのが、このデパートの、生まれ育ちの良さから来るその空気なのである。

 

陳列されている商品には、必ずバーグドルフらしさが振りかけられている。

ここで見つけた某ブランドの洋服を、他のデパートはおろか、ソーホーの旗艦店でさえも、見つけることができなかった。

 

そして歴史と伝統を誇りながらも、古臭い化石となることは決してない。優美かつユニークなウィンドウ・ディスプレイに象徴されるように、クラシックは踏襲しながらも、その商品ラインナップは常に時代の流れに敏感であり、斬新であり、見る者を飽きさせることはない。

 

このような理由から、もしニューヨークに観光に来ることがあって、しかしあまり時間がなく、たった1つしかデパートに行けないとしたら、サックスフィフスアベニューではなく、バーニーズでもなく、ましてやブルーミングデールズでもなく、何としてでもバーグドルフグッドマンに行くべきだろう。そこへ行けば、ニューヨークが誇る「何か」を感じることができるかもしれない。

 

私は、あそこの入り口ホールのシャンデリアの下で咲き誇っていた、ピンクの胡蝶蘭の美しさと気品を、決して忘れることはないだろう。

 

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